中間層以上でなければウランバートルで車に乗れない?交通政策がもたらす生活格差
ウランバートル市の深刻な交通渋滞は、長年にわたり市民の悩みとなっています。政府はさまざまな対策を講じてきましたが、目立った改善は見られません。
むしろ、その施策は市民の自由や経済活動を制限する方向に向かっています。

新制度:「10年以上経過車にはナンバー発行停止」
2024年6月から実行されたこの制度では、ウランバートル市で新規ナンバーを取得できるのは製造から10年以内の車両のみとされ、市民に衝撃が走りました。
さらに、ウランバートルに輸入される車両には輸出国での整備記録の提出が義務づけられます。

中間層以下の市民は「車を持てない」時代に?
2012年製の車でも2,500万トゥグルグ(約110万円)、2018年製になると3,300万トゥグルグ(約140万円)以上と価格は上昇傾向。
10年以内という条件により、新車・高年式車しか乗れない仕組みが強制される仕組みとなります。
「条件を満たすのは中国製の新車しかなく、最低でも1億トゥグルグ(約440万円)。市民全員が買えるわけではない」
― エコカー輸入業者協会 N.シャグダル氏
月収9万円の市民(消費者)が2〜3年ローンで中古車を購入するには、制度のハードルはあまりに高すぎると言えます。

月収200万トゥグルグ(約9万円)のB.エンフマンライ氏は2012年製プリウスを購入し、「正式なナンバーが発行されず、闇ナンバーを200万トゥグルグで購入した」と証言。
「今買わなければ価格がさらに高騰する」と判断し、闇市場で手に入れざるを得なかったといいます。
電子申請74%が10年以上経過車:発行は停止へ
2024年2月、ウランバートル市議会はナンバープレートの発行上限を73万枚と決定。11月8日からは一時的に発行停止となります。
市民の74%が10年以上経過した車で申請しており、多くが制限に該当しています。
日本からモンゴルへの中古車輸出(乗用車)


2024年6月に実施したウランバートル市の制度改革の影響を受け、中古車輸出台数の減少が2025年6月まで続いています。
今後、ウランバートル市の改定が起こらない限り日本からの低年式車種は減少するでしょう。
加えて輸出の平均単価が上昇したため、高年式車種の輸出に切り替わった様子も伺えます。
引用元データ:政府統計の総合窓口(e-Stat)|
結論:格差を助長しない制度設計が求められる
ウランバートルの交通施策は環境と渋滞を理由に市民の自由を制限する側面を持ち始めています。
所得に応じた柔軟な制度設計が求められており、今後の見直しに注目です。