マレーシア市場における中国ブランドの躍進──日本ブランドの優位性は揺らぐのか?
マレーシアの輸入車市場では中国製自動車ブランドがシェアを急拡大しており、これまで圧倒的優位を誇ってきた日本ブランドに挑戦状を叩きつけています。
本稿では最新データをもとに解説します。
中国メーカーの一つ奇瑞汽車について
奇瑞汽車(Chery Automobile)
中国「ビッグ5」の一角。1997年安徽省蕪湖市政府出資で設立、会長兼社長は尹同耀氏。
Quick Facts
主要沿革
- 1999年:セアト・トレド生産開始
- 2003年:GMとデザイン問題で関係解消
- 2004年:SAIC生産ライセンス取得
- 2006年:累計50万台生産達成
- 2024年:欧州現地生産(スペイン合弁)
展開ブランド
Chery
SUV「Tiggo」、セダン「Arrizo」他
Exeed
2017年設立の高級SUV群
Jetour
ファミリーSUV「Traveller」他
iCAR
2023年設立の若年層向けオフロードEV
Luxeed
ファーウェイ協業のEVセダンR7等
Omoda
若年層向けクロスオーバーSUV
Jaecoo
オフロード特化高級SUV
LEPAS
都市エリート向け電動SUV
Karry
商用バン・トラック特化
出典:
- NSTP/FATHIL ASRI「マレーシア非国産市場レポート」2025年6月20日
- CIMB証券調査ノート(市場シェア推移、TIVデータ)
- Chery 公式サイト・年次報告
中国ブランドのシェア拡大トレンド
CIMB証券アナリスト モハメド・シャナズ・ヌール・アザム氏によると、輸入車セグメントが減少する中、
中国ブランドの市場シェアは、 2024年1–5月の3.1%から、2025年同時期には5.4%へと急増しています。
- ・ Jaecoo と Jetour の新モデル投入
- ・ BYD、Chery の堅調な販売
※モハメド・シャナズ氏コメント(CIMB証券 調査ノート)
日本ブランドの現状と維持戦略
日本ブランドの代表格であるトヨタは、2025年1–5月に11.4%のシェアを獲得し、依然としてセグメントリーダーの座を維持しています(2024年同時期は11.6%)。一方、マツダ、ホンダ、三菱などはいずれも対前年比でわずかにシェアを落としています。
両国製ブランドの競合激化を受け、日本メーカーは以下の施策を強化中です
・高付加価値モデルの投入
・アフターサービス網の拡充
・ハイブリッド・EV技術の現地適応
※出典:CIMB証券 モハメド・シャナズ氏インタビュー
国産(PERODUA/PROTON)ブランドの底堅さ
同氏によれば、2025年1–5月の国内販売台数(TIV)は前年同期比4.9%減の316,198台となったものの、 国産ブランドは減少幅を抑え前年比2.4%減にとどまり、輸入車の9.1%減を大きく上回りました。これにより国産シェアは64%に上昇しています。
※出典:CIMB証券 2025年TIVデータ
マレーシア国内人気メーカー
ブランド | 販売台数 |
---|---|
プロドゥア(マレーシア) | 166,188台 |
プロトン(マレーシア) | 69,771台 |
トヨタ(日本) | 57,370台 |
ホンダ(日本) | 35,471台 |
奇瑞汽車・Chery(中国) | 14,166台 |
三菱(日本) | 6,724台 |
BYD(中国) | 5,400台 |
メルセデス・ベンツ(ドイツ) | 4,614台 |
マツダ(日本) | 4,127台 |
BMW(ドイツ) | 3,673台 |